
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領による、国会でのオンライン演説(23日)を聞き、「暗喩」の巧みさを思いました。
直接、「○○については、日本もウクライナも一緒でしょう」などと訴えるのではなく、単語をちりばめて受け手の想像力に訴えるテクニックです。
チェルノブイリ、ザポリージャ原発のくだりや、ロシアの侵略の津波という表現は、故郷に帰りたくても帰れない人々のエピソードを重ねることで、東日本大震災・福島第一原発事故を想起させました。3月に「サリン」という単語を耳にすれば、発生から27年が経過した地下鉄サリン事件を脳裏に浮かべた方も多かったはずです。
自国で起こっている理不尽を語りながら、「無辜の人々が突如命を奪われ、故郷を追われる」という共通の経験を日本人もしていると思い起こさせる。ゼレンスキー大統領の表情の使い方に加え、これは卓越したスピーチライターがいるなぁと感じました。
綸言汗の如し。皇帝が一度発した言葉は、たとえ冗談でも取り消すことができないという意味です。国のトップの発言、特に公の場での発言は公文書にも匹敵します。そこで正確性ばかりを追求していくと、政策の羅列となり無味乾燥なものになってしまいます。