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今回は秋吉久美子を主演に抜擢(ばってき)した「赤ちょうちん」を紹介する。
「八月の濡れた砂」の後、日活はロマンポルノへとかじを切る。藤田敏八もその路線で「エロスは甘き香り」(1973年)や「実録不良少女 姦」(77年)を撮るが、合間に一般映画も手掛けている。それが「赤ちょうちん」と「妹」「バージンブルース」でロリータ感たっぷりの秋吉久美子を起用した主演3部作(いずれも74年)だ。
これには訳がある。かぐや姫の「神田川」がミリオンセラーになると、映画各社は映画化権の争奪戦を繰り広げた。そして東宝が草刈正雄、関根惠子主演で「神田川」(74年、出目昌伸監督)を撮ったので、日活も負けじとこの作品の映画化権をもぎ取ったのだ。
監督は政行(高岡健二)を22歳に設定。駐車場の管理人をし、根は真面目だがジコチューでだらしがなく、結婚して家族を養うという自覚に欠ける人物にしている。
妻の幸枝(秋吉)は17歳で未成年ということから、スーパーのレジ打ちで家計を助け、故郷にいる祖母に仕送りまでしているが、どこか頼りないお人よし。
幼くて頼りない若い夫婦を当時の世相を織り込みながら描き、人々の共感を呼んだ。特に赤いマフラー、ブランコ2人乗りキス、銭湯、公衆電話、パンタロンといった昭和感あふれる情緒と秋吉のか細く弱々しい小悪魔的演技が評判だった。