風変りなのが「非常線」(53年)で、核実験を目前にしたネバダ州のゴーストタウン(鉱山の町)に、3人の脱獄囚が人質にした4人の男女を車に乗せて逃げてくる。核実験を背景とした異色のサスペンスだが、意外にもわが国でも公開されている。日本で原爆反対の運動が高揚する直前、日本人観客はどんな思いで本作を見たのだろうか。監督は「眼下の敵」(57年)で有名な俳優出身のディック・パウエル。
「アイヴィー」(47年)は美人女優のジョーン・フォンテインが珍しく悪女を演じたサスペンスミステリー。面白く見せているとはいえ、同ジャンルに必要な細部へのこだわりに欠けているのがちょっと残念だった。
そういえば、彼女は本作の前に巨匠アルフレド・ヒチコックの「レベッカ」(40)や「断崖」(41年)で、いつもの清楚なヒロイン役を演じていたのを思い出す。
「ハリーおじさんの悪夢」(45年)、「優しき殺人者」(52年)は両作とも日本未公開。予想のつかないドラマ展開に、結末が心配になってくるが、ラストをうまく締めくくっているので、かつてのハリウッド映画の巧みさについ感心してしまう。
(瀬戸川宗太)