女優、鰐淵晴子(76)が、東京都杉並区の名画座「ラピュタ阿佐ケ谷」で開かれた番匠義彰監督の特集上映のトークイベントに登場。満員の観客に熱気をもって迎えられた。
番匠監督は神奈川県鎌倉市にあった松竹大船撮影所で活躍し、1955年から10年間で38作を撮影。映画は90分前後ながら複雑に展開し、嫉妬や笑い、哀切を巧みに描いた。
「三人娘乾杯!」「ウナ・セラ・ディ東京」など6作で主役やヒロインを務めた鰐淵は、「番匠先生は感情のひだを取り上げていらした。人間模様、下町の人情、エピソードがてんこ盛りだけど全然肩が凝らない」と振り返った。
番匠監督自身の写真や映像、発言はほとんど残っておらず、ベールに包まれている。
「演技は自由にやらせてくれて何も注文を付けない。先生は現場にいるのかしら? というぐらい。いつもパイプをくゆらしていて、先生がクスクス笑っているときは、演技は大成功なんです」
あまりに自由に演じすぎて「晴子ちゃん、それだめ」と言われたこともあったという。
番匠映画でDVD化されている作品はわずかで、鰐淵は「知られていないのはもったいない。(桂小金治や大泉滉ら)バイプレーヤーの方々も素晴らしいし、見事な展開は先生の匠の技。外国映画にも負けないと思う」と語った。
特集上映の盛況を受け、CS放送の衛星劇場は5~6月に番匠作品を特集する。