歴史の必然として存在していた本番風俗店が、埼玉県警による2004年の「風俗環境浄化重点推進地区」指定によって、ほぼ姿を消すことになった西川口駅周辺(同県川口市)。そこへ、入れ替わるようにして流入したのが、中国系飲食店やマッサージ店だった。
12年から約10年間、西川口でマッサージ店を開業した広東省出身の女性、Yさんが明かす。
「新宿のマッサージ店で働いていた私は、独立して自分の店を持つために西川口に来ました。当時、西川口は元風俗店だったような空き店舗がいくつもあって、賃料は歌舞伎町や池袋の半額以下だった。うちみたいな手コキまでの店なら、ヤクザも新宿みたいにみかじめを請求してくることもなかったし、警察も都内よりはうるさくなかったので商売がしやすかった。50分7000円。飲み会の後のサラリーマンが、帰宅途中に寄ってくれるので繁盛していました」
西川口でのYさんの「非健全ビジネス」は、コロナ禍でもほとんど揺らがなかったという。
「コロナ第一波(2020年)の6月くらいまではうちも客足が減りましたが、その後はすぐに回復しました。都内で遊べるお店が少なくなったせいで、よそからもお客さんが流れてきているようでした。そうした状況に目を付けた池袋や新宿で営業が成り立たなくなった中国系の同業者や飲食店が、続々と西川口に移転するようになった」