こうした抵抗について、ロシア軍の支援を受ける親露派「ドネツク人民共和国」軍事部門の報道官は11日、「製鉄所の出入り口をふさぎ、化学部隊の手でいぶり出すのが簡単だ」と発言している。
化学兵器使用の意図を示唆した発言といえる。
ただ、米国防総省のジョン・カービー報道官は「現時点では確認できない」とする一方、強い懸念を示した。旧ソ連やロシアの関与が疑われる生物・化学兵器をめぐる事案が多々あるからだ=別表。
化学物質使用疑惑をどう見るか。
元陸上自衛隊化学学校校長の吉野俊二氏は「サリンの場合、呼吸困難となると死に至る危険性がある。死者が出ていないとすれば、別の化学物質の可能性も考えられる。化学兵器としては、塩素ガスやVXガス、マスタードガスなどが知られる。一定期間残留して、がれきや建造物、地下にまで浸透していく無差別兵器だ」と語った。
生物・化学兵器の使用は、国際法で厳しく禁じられている。
1975年には生物兵器の研究・製造・売買を禁じた生物兵器禁止条約が発効し、97年には化学兵器禁止条約も発効している。ロシアはいずれの条約も締結しているが、その廃棄作業は遅々として進まず、プーチン氏は2017年9月になって「廃棄作業が完了した」と主張した。