
〝釣ってさばく〟で分かったこと
日本の海や魚の魅力を発信しようと、寿司職人と作家というユニークな二刀流で活動している。それが、完全紹介制の寿司屋「酢飯屋(すめしや)」(東京都文京区)の店主であるこの人だ。
「お寿司屋さんで触れる魚は食材としてなので、生き物としての魚を海で釣ってさばくようにしたら自分の心情はどう変化するだろう、というのが出発点でした」
自らを「寿司作家」と称す。活動は店舗のカウンターで腕を振るうだけにとどまらず、ブログを開設して魚の目や口の中など部位ごとに写真を掲載。幼稚園や小学校で魚をさばいて料理に仕上げるまでを子供たちに見せる会や、高校でのワークショップを行うなど、寿司職人の枠を超えた働きっぷりだ。
「以前は釣り好きの人からタイの話を振られても食材としてのタイしか説明できませんでした。悔しかった。釣りから始めることで、改めて魚屋さんや漁師さんのすごさを知る機会にもなりましたし、自分も自信を持ってお客さんに説明できるようになりました」
現代人向けにレシピの再構築を
知識を深めたことで、「魚のストーリーを伝える」が信条となった。そんな思いから生まれたのが、子供たちに楽しく魚や寿司の世界を知ってもらいたいと手掛けた「おすしやさんにいらっしゃい! 生きものが食べものになるまで」(岩崎書店)という写真絵本。子供たちを店舗に招き、キンメダイやアナゴ、イカなど釣り上げた魚が、おいしい切り身へと変わっていく様子を解説付きで見せていく構成だ。