
★其ノ四百弐拾
水商売のアルバイトをしていた頃、ホールで働くボーイさんたちの中に、支度時間や休憩の時間にいつもマッチでタバコに火を付ける方がお一人いらっしゃいました。
ライターのほうが便利でしょうし、お気に入りのライターをいつも使う方もいらしたため、「珍しいな」と思っていました。
ある日、「先輩はどうしていつもマッチなんですか?」とうかがってみたところ、少し間があって「吸い始めたときからだったからなぁ、なかったらライターを使うけど、やっぱりマッチじゃないと落ち着かないのかも」という返事が。
先輩の年齢からすると、(健全にわが国で育ち、二十歳から吸い始めたと信じていますよ)かれこれ15年近くタバコに火を付けるときはマッチを使っているようです。
落ち着かないのかもとさり気なくおっしゃるのも、ひとつのこだわりなのかもしれませんね。
普段から優しい頼れる方でしたから、マッチのエピソードもカッコいいなとちょっとドキリとしましたが、どうやら長く付きあっている彼女がいると聞いていたので、ドキリには引っ込んでいただきました。