
「今朝も1時間ほど軽く走った後、会社へ出勤しました。距離? 10キロぐらいかなぁ」
ジュニア時代、陸上競技3000~10000メートルで次々に日本記録を塗り替え、その後も国際大会での3000メートル、5000メートルで日本記録を樹立。付いた名称は、日本長距離界の女王。この人の攻めの走りに魅せられたファンは少なくない。

朝の10キロも「軽く」と言ってのけるあたり、普通のOLとは違うのだ、と改めて思い知らされた。
1月30日の大阪ハーフマラソンで現役を引退した。競技場には有森裕子、高橋尚子、渋井陽子らレジェンドが花束を持って駆け付けた。
「あなたのおかげで陸上界が朗らかになりました。ありがとう」。大先輩、増田明美はこうねぎらった。
「やることはやり終えましたね」
爽やかな表情を見るに、〝戦場〟から離れ、穏やかな生活を手に入れたうれしさが率直に伝わってくる。だが、日に焼け引き締まった横顔を目にすると、やはりまだやれるのではという思いが脳裏をよぎる。