疲れてきていたというベンチの判断だったようだが、それは僕が見ていてもそう思った。ただ、今は選手を大事にするという方針になっているけど、もう1イニング投げても、選手生命が絶たれることはないだろうし、本人も投げたかったと思う。9回も投げさせて、裏の攻撃も点が入らなければ、お役御免でもよかったんじゃないかな。
大記録は、味方はやらせてあげたいし、敵は何とか阻止したい。愛工大名電高で先輩の工藤公康さんが、巨人時代に7回ぐらいまでノーヒットノーランをやっていたのを僕が阻止したことがある。そのときは、後から工藤さんにメチャメチャ怒られたけど、いくら先輩でも「どうせ負けるなら記録を達成させてあげよう」なんて考えは、野球選手にはない。9回2死でもあきらめないからね。
僕もノーヒットノーランの試合を2回経験している(野口茂樹のときはレフト、バンチのときは一塁)。「俺は守備の人じゃないから。取れなかったら、しようがない」というドライな性格だけど、完全試合を守っているロッテの選手は嫌だろうね。でも、そういう体験をできることは幸せだと思うよ。
■山崎武司(やまさき・たけし) 1968年11月7日、愛知県生まれ。愛工大名電高からドラフト2位で中日入り。以後オリックス、楽天、再び中日と渡り歩き2013年限りで引退。中日時代の96年に本塁打王、楽天時代の07年には本塁打・打点の2冠王に輝いた。27年間で通算1834安打、403本塁打、1205打点。後輩の面倒見のいい親分肌で、愛称はジャイアン。