/cloudfront-ap-northeast-1.images.arcpublishing.com/sankei/RUSMDQTKZNOD3NK455ZYRJDQYI.jpg)
今年2月に75歳で亡くなった歌手の西郷輝彦さんは、2011年に前立腺がんによる手術を受けて、17年から再発治療を行っていた。昨年4月に渡豪して新しい治療法「PSMA標的治療」を受け、昨年9月には、がんが消えたことをテレビ番組で報告していた。この治療法は、前立腺がんの表面に多く現れるタンパク質の一種・PSMAをターゲットにしている。PSMAに特異的に結合する物質「リガンド」に、放射性物質をつけて注射すると、がん細胞だけを放射線治療できる。
「PSMA標的治療は、PET検査(別項参照)の仕組みに似ています。日本のPET検査で使用される物質のFDGは、がんがブドウ糖を取り込みやすい性質を応用しています。このFDGの部分をリガンドに置き換えることで、新たな治療法や検査法が開発されているのです」
こう説明するのは、東京慈恵会医科大学泌尿器科診療副部長の三木健太医師。前立腺がん治療のエキスパートであり、凍結療法など新たな治療法の開発にも積極的に取り組んでいる。
/cloudfront-ap-northeast-1.images.arcpublishing.com/sankei/KNVJYBAWUZPODKLIUPC5K6NDGA.jpg)
FDG以外にも、一酸化炭素ガスや二酸化炭素ガスの薬剤によるPET検査では、脳の血液量がわかる。細胞や組織の性質に合わせて薬剤を変えることで、目的の部分まで届けられ、薬剤についた微量の放射線によってPET検査では画像で捉えることがきる。この仕組みを応用し、がん細胞にダメージを与える放射性同位元素がついた薬剤を注射して治療するのがPSMA標的治療だ。
「PSMAは、進行した前立腺がんの表面にたくさん現れます。再発・転移がんでホルモン療法が効かない患者さんに対し、PSMA標的治療は、化学療法よりも有用性が高いことは、オーストラリアの比較試験で証明されています」