勝負師たちの系譜

棋士引退の4人、現役最後の対局 各人それぞれの〝持ち味〟を出した指し手2/2ページ

小林健は最後の対局に、中飛車を採用した。振り飛車党に転向した小林健の、最後に指したい将棋だったのだろう。将棋は小林健の中央からの動きを神崎が逆用し、中央から盛り上がりつつ手厚く攻めて、神崎の完勝。

小林健は弟子の育成にも熱心で、大勢の弟子がこの日控室で見守っていた。

小林健にすれば、勝って皆をガッカリさせようと思ったらしいが、残念ながら「先生、お疲れ様でした」の言葉を受けることとなった。

田中の最終局も、竜王戦の対田中悠一五段戦で、こちらは逆に田中悠の中飛車に対し、田中寅は相手の攻撃陣の真正面から突撃する、見たことのない仕掛けに出た。今回の将棋大賞の『升田幸三賞特別賞』を受賞した、田中寅らしい仕掛けだ。

一見無謀と思えるこの仕掛けはAIも支持し、たちまち優勢となったが、もう一歩厳しい踏み込みに欠け、田中悠の粘りを許した。終盤では、受けを放棄して攻め合いに出たのが致命傷となって田中寅は敗れたが『序盤のエジソン』らしさを見せた。

小林宏は将棋も人柄も真っ直ぐな男で、なぜ引退に踏み切ったかは本人しか分からないが、最後は上野裕和六段相手に、得意の角交換早繰銀の急戦を用いるなど、各人それぞれ持ち味を生かした将棋で、現役を終えた。

■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

健活手帖

zakスペシャル

主要ニュース

ランキング

  1. 「政界屈指の親中派」林外相の留任は地雷か 岸田首相が茂木氏らと人事協議 識者「適任でない」「保守層離れる」

  2. 高市氏の防衛相が浮上 内閣改造、林外相留任で「親中派内閣」の懸念 旧統一教会との関係、局面転換を狙う官僚の処遇にも注目

  3. 岸田文雄首相「急転直下の内閣改造」で焦点になる「旧統一教会と関係深い安倍派」の処遇

  4. 【心肺停止の中国】半導体最大手・TSMCをそっくり強奪 ウクライナと異なる台湾侵攻 戦える?実戦経験ない中国兵と「ゼレンスキー効果」で士気高まる台湾人

  5. 【マンション業界の秘密】米中韓で不動産価格が下落、日本は? 日銀がかたくなに「異次元金融緩和」を維持する理由

  6. 【心肺停止の中国】中国経済の〝ゾンビ状態〟さらに悪化 若者の失業率40%超、住宅ローンの債務残高960兆円 地方のショッピングモールでは売り子があくび

  7. 【実況・小野塚康之 時代を越える名調子】夏の甲子園観戦記 注目の投手対決 近江vs鳴門 崩れた近江の強み〝堅守〟救う山田の三振モード・ギアチェンジ!

  8. 米国で一斉「中国スパイ狩り」 FRBも標的、工作員とつながる13人を特定 「対日諜報活動も高まる可能性」石平氏

  9. 中国、台湾周辺での大規模演習終える ペロシ米下院議長の訪台に反発 尖閣周辺でも領海侵入…エスカレートする威嚇行動

  10. 広瀬アリス・すず、上白石萌音・萌歌 妹のほうが“CMギャラが高い”理由

ピックアップ連載

連載一覧へ

最新特集記事

特集一覧へ