具体的には、40~65歳で現在減塩をしている、または過去にしていた経験のある男女36人を対象に、微弱な電気刺激が付与される箸型デバイスを用いて、一般食品を模したサンプル(食塩を0・80%含有するゲル)と減塩食を模したサンプル(食塩を0・56%含有するゲル、食塩含有量は一般食品を模したサンプルとの比較で30%低減)を試食した後、感じた塩味強度について評価する試験を行った。
その結果、減塩食を模したサンプルを試食するときに、開発した電気刺激波形を箸型デバイスに付与することで、電気刺激を付与しない条件と比較して、塩味が1・5倍程度増強される結果が得られた。また、電気刺激を付与したときの減塩食を模したサンプルの塩味強度は、一般食品を模したサンプルと同等であることを確認。これにより、食塩を30%低減した食品を摂取する際に、本技術を搭載したデバイスを用いると通常の食事と同等の塩味を提供できることが示唆されたという。
また別に、減塩味噌汁を用いた実験をしたところ、塩味の増強効果が確認され、コクやうま味、全体のおいしさの向上を感じたという意見が得られた。宮下教授は、塩味が濃く感じられるメカニズムを次のように説明する。
「人間は、食べ物に含まれるナトリウムイオン(Na+)が舌につくことで塩味を感じます。味噌汁に口をつけ、汁に浸かったお箸から微弱な電気を流すことで、Na+を一時的に舌から離します。そして電気を反転すると、Na+が一気に舌に押し寄せます。これがお箸を使うたび繰り返されることで、塩分を足すことなく塩味を通常より強く感じる、という仕組みです」
今後はさらに研究・改良を進め、来年か再来年の実用化を目指しているとのことだ。 (医療ジャーナリスト・石井悦子)