ところが、伊東氏は球のキレもなく、コントロールも悪く、あまつさえ投げたところが頭部危険球で一発退場(=解任)となってしまったわけですな。ネタの選択、言い回しが悪すぎます。
伊東氏が本気で「生娘をシャブ(薬物)漬けに」と考えていたとは思えません。問題の根本は、話術の質なんですよ。そして、社会人として、特に有名企業の役員として、人権・ジェンダー問題への意識もなかった。
この問題以降、どの会社もリスクヘッジのため、「人前で話すときは、もう冗談とか一切言うな。真面目なこと言ってサラッと降りてこい」という常識に切り替わってしまう気がします。それくらい笑いというのは難しいし、リスクが付きまとうものなんです。
だって、プロの噺家だって余計な一言で、お客が「ドン引き」なんてザラにあるんですもの。素人となれば、より難しいですよ。
こんな小噺があります。
風俗好きな2人の男が立ち話…。
「昨日久しぶりに嫁とエッチして、風俗帰りのいつもの癖で…2万円出してしもたんや」
「え! 嫁怒ったやろ?」
「いや…どういうわけか、嫁が2000円釣りをくれたんや」
この小噺は面白いけど、たいてい客は引くんです。ね? オモロいだけでもアカンのです。TPOとか時代を読めないと噺家も一発退場になってしまう世の中です(苦笑)。
■桂春蝶(かつら・しゅんちょう) 1975年、大阪府生まれ。父、二代目桂春蝶の死をきっかけに、落語家になることを決意。94年、三代目桂春団治に入門。2009年「三代目桂春蝶」襲名。明るく華のある芸風で人気。人情噺(ばなし)の古典から、新作までこなす。14年、大阪市の「咲くやこの花賞」受賞。