その後、私は格闘技専門誌の編集長に就任し、幾度かミルコにインタビューする機会を得た。スター街道を突き進んでいたが、精神的にも若さが目立ち、やんちゃな印象で、わがまま放題。取材をしっかりと受けてくれない選手であり、悩ましかった。
一方、取材を通じ紳士だと感服したのは、フランスのジェロム・レ・バンナ(49)だ。最初に会ったとき、手土産に彼が大好きなブルース・リーのグッズを持参した。好印象を持って覚えてもらったようで、以降は、「土産は持ってきたのか」と、気さくに雑談からスタートして格闘技の話をしてくれた。
日本では、武蔵(49)も、「K―1」を盛り上げ、見出しが立つように意識してくれた。魔裟斗(43)や小比類巻貴之(44)ら70キロ前後の選手が活躍すると格闘技人気は再び活性化して、約3年の間で100人以上の格闘家のインタビューを積み上げることができた。
ミルコは、あえてリング内外で〝悪役〟を演じてくれたのか、今では、あの苦い記憶を妙に懐かしく感じている。あの経験があったからこそ、有名アスリートや芸能人と接する際に、何が起ころうとも動じることがなくなった。鍛えてくれたミルコには感謝している。
■高須基一朗(たかす・もといちろう) 出版プロデューサー。父・高須基仁の下で、数多くの有名芸能人のヘアヌード撮影の現場進行を経験。代表作には、アントニオ猪木『人生のホームレス』、ミス・ユニバース『食べるフィットネス』など。格闘技雑誌の編集長などを経て、一昨年6月、福田明日香の大胆なファースト写真集『PASSIONABLE』をプロデュース。