
韓国の国会で検察の捜査権を完全剝奪する法改正をめぐって大混乱している。退陣まで10日余りの韓国・文在寅(ムン・ジェイン)大統領周辺など捜査逃れの意向もうかがえ、野党側や国民、識者らは反発の嵐だ。〝文在寅保護法案〟と揶揄(やゆ)される法案が駆け込み成立しても、「政権関係者の大量監獄行きは避けられない」との見方もある。
左派系与党「共に民主党」が国会提出した改正法案は、検察の捜査権を段階的に廃止し、捜査範囲を汚職・経済分野のみに大幅に縮小、制限するというもの。「韓国版FBI」と呼ばれる「重大犯罪捜査庁」を新設し、検察から剥奪した捜査権を移管するという。
韓国の検察は、政権末期には現職大統領や家族を標的に捜査し、新政権が発足すれば過去の政権の不正を捜査することで、歴代大統領の多くは悲惨な末路をたどった。今回も文氏周辺や、大統領選で敗れた李在明(イ・ジェミョン)元京畿道(キョンギド)知事周辺の疑惑が浮上している。
与党内には、法改正できなければ「文政権の青瓦台(大統領府)の人物20~30人が監獄に行くことになりかねない」という危機感があるという。共に民主党を離党し無所属となった梁香子(ヤン・ヒャンジャ)議員が、朝鮮日報(日本語電子版)のインタビューで明かした。
法改正には検事総長が辞表を提出し、全国の捜査官らから「『犯罪者天国法案』をつくろうとしている」との批判も飛び出した。世論調査会社の韓国ギャラップが22日に発表した世論調査でも、検察の捜査権を「そのまま維持するのがよい」が55%だった。