
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、核兵器を「必要なら使う」と言い始めた。ロシア側は「第三次世界大戦」に言及するなど西側を威嚇する。ウクライナ東部と南部を支配し、5月9日の「独ソ戦・戦勝記念日」で戦果を誇りたいプーチン氏だが、軍の消耗は激しい。専門家は、核の使用は北大西洋条約機構(NATO)の参戦を招く「自殺行為」だと指摘する。
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プーチン氏は27日の演説で、第三国がロシアに戦略的脅威を与えようとした場合は「電撃的で素早い対抗措置を取る」「ロシアは他国にない兵器を保有している。必要なら使う」と述べ、核兵器の使用を辞さない姿勢を示した。東部ドンバス地域の親露派支配地域とクリミアの安全確保は「必ず達成される」と自信をみせた。
セルゲイ・ラブロフ外相も25日に政府系テレビで、核戦争と第三次大戦の可能性は「十分にあり、過小評価すべきではない」と威圧する。
一連の発言について「警告だけではなく、本当に大戦に発展しかねない状況が迫っている」とみるのは筑波学院大の中村逸郎教授だ。
ロシア軍は東部ドンバス地域のほか、2014年に併合したクリミア半島と陸続きの南部の完全な支配を目指す。ウクライナの隣国モルドバからの独立を一方的に宣言している親露派地域「沿ドニエストル共和国」への接点をつくり、モルドバ国境に近いオデッサの制圧も視野に入れている。
オデッサは黒海に面する港湾都市で、軍港も存在する。昨秋には米海軍第6艦隊旗艦「マウント・ホイットニー」や、巡航ミサイル「トマホーク」を装備する米駆逐艦「ポーター」などが黒海に入域し、露海軍が監視を強めた経緯もある。