「古い井戸に水があるのに、新しい井戸を掘るのはやめたほうがいい」
先日亡くなった元サッカー日本代表監督、イビチャ・オシム氏の言葉のなかでも有名な〝語録〟。同じ能力であれば若手を積極的に起用していたオシム監督ですが、それでも決してベテランを軽く見ていたわけではありませんでした。あくまで能力主義で、若手偏重ではなかった。そこで飛び出たこの名言。「ベテランでも能力があるなら、若手ばかりを使う必要はない」とだけ言っていたなら、この言葉はそんなに人々の記憶には残らなかったでしょう。
オシム氏の言葉が残っているのは、それらが「寓話(ぐうわ)的」だからです。意外かもしれませんが、寓話というのは比喩なんですよね。つまり、たとえ話。
美しい女性を見たときに「君は太陽のようだ」という比喩があるように、「AはBのようだ」というのが一般的な比喩です。もう少し厳密にいうなら、「君(のまぶしさ/あたたかさ)は太陽(のまぶしさ/あたたかさ)のようだ」だから、比喩は「A(のX)はB(のX)のようだ」という形にまとめられます。君は太陽とおなじで肉眼で直視できない、って意味にも取れちゃいますが、それが比喩の面白いところです。