
谷川連峰の西端に位置する平標(たいらっぴょう)山。新潟県と群馬県を隔てる上越国境稜線(りょうせん)にそびえる。谷川岳に登ると西側にずっと稜線が連なっているのが眺められ、この稜線を歩いた先に平標山があるのだな…といつも思っていた。
広くなだらかな平標山山頂からは360度の展望が広がる。東に谷川連峰の山々が間近に連なり、西側にひときわ目立つ平らな山頂は苗場山。巻機(まきはた)山や平(ひら)ケ岳なども一望のもと。夏に訪れれば山頂一帯はお花畑となっている。山頂からは四方に尾根が伸び、登山道がつけられている。西側の平標登山口は路線バスも停車するうえ、広い駐車場があり、日帰り登山を楽しむ人も多い。

すばらしい展望が楽しめる山のはずが、今まで訪れたときは常に眺望に恵まれなかった。数年前の晩秋に谷川岳から上越国境稜線を縦走したときは、行程中ずっとガスの中にいたし、10年近く前に沢登りで山頂に詰め上がったときは、沢にいる間はずっと青空だったのに、なぜか山頂にたどり着いたらガスで真っ白。「本当はすごく眺めがいいんですけどね…」とパートナーが呟いたのを思い出す。
今年4月の終わりに、残雪の平標山を歩いた。平標登山口から、反時計回りに周回のルートをとった。林道を進んで平元新道を登る。本来は丸太の急な階段が続く道は雪の斜面になっていた。ところどころで階段や登山道が露出し、目印のテープがついているのがありがたい。
天気はよく、抜けるような青空。日差しが強く汗をかきながら雪の斜面を登っていく。稜線に出ると、すばらしい眺めに何度も立ち止まる。最後に丸太の階段を上りきり、山頂に到着。青空の下、雪を抱いた山々が周りに広がっているのが本当に美しい。こんな景色が広がっていたのか。登ってきてよかったな。下山の松手山コースもずっと展望の尾根歩き。幸せな気持ちで歩き続けた。
たぶん今頃は、稜線や登山道上の雪はだいぶ溶けているだろう。雪解けとともに木々が芽吹き、草が茂り、花が咲き乱れる。山の春はこれからだ。