さらに、空中指揮機「イリューシン80」による観閲飛行も中止となった。核戦争時に大統領らが搭乗する想定から「終末の日の飛行機」とも異名がつく同機だが、7日のリハーサルでは上空を飛行する様子が確認されたが、9日の本番では確認されなかった。

ロシア側は「悪天候」を理由に見送ったと説明した。しかし、演説の映像を見る限り、当日のモスクワの空は晴天だったようにもうかがえる。
なぜ、イリューシン80は飛ばなかったのか。
前出の潮氏は「確かに、映像で見る限り天候不順とは受け取りにくいが、風が強かったり、離陸地点の天候条件が悪いという可能性はある。あえて飛ばさなかったとすれば、『核戦争に行き着くことは避けたい』という西側諸国への強いメッセージと受け取れる。ただ、それならば7日のリハーサルには参加した説明もつかない」と指摘する。
ロシア軍内部に異変が生じたとする見方もある。
軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「イリューシン80の誇示は、核攻撃に備えた対外的なメッセージになるので、国内向けの式典では必要なかったのかもしれない」としたうえで、「空軍内部による、プーチン氏への反発やボイコットの可能性もゼロではない。軍内部やプーチン氏周辺での温度差も見え隠れしていた」と指摘している。