その時の状況を言葉巧みに説明すると、続けて「陽水さんも玉置さんもあまり語らない。3人を送り出して歌が始まった。サスガだね。あの人は。あの大御所2人で緊張というのは噓ばっかし。歌い始めた瞬間にもう別人ですよ。いつもより『飾りじゃないのよ涙は』の歌の盛り上がりのところで、ウワーッと声が出る。ものすごい大きなボリューム。これは音声さんがイジっている以前の問題で、ウワーッとビブラートをきかせて、振りもキレキレで素晴らしい腰つきと足のサイドへの運びで…。黒い、87年のバブル真っ盛りの肩幅を強調させるパットが入っている黒い上下のスーツを着ているわけですよ。だから、もうかわいいアイドルでもない、かといって、ある年齢を超えた妖艶な色気を出す人でもない。あの中森明菜を何風だとカテゴライズはできなかった。ただ中森明菜の魅力だとしかいえない。あまり衣装がゴージャスでカラフルな色だと振りに目がいかない。ものすごいミニマムな衣装を着て、振りに集中して歌い上げた。もう、2人が黒子でしたからね。2人を黒子にしてまでしてやったという中森明菜のすごみ…」と興奮しながら語ったのだった。 =敬称略 (芸能ジャーナリスト・渡邉裕二)
■中森明菜(なかもり・あきな) 1965年7月13日生まれ、東京都出身。81年、日本テレビ系のオーディション番組「スター誕生!」で合格し、82年5月1日、シングル「スローモーション」でデビュー。「少女A」「禁区」「北ウイング」「飾りじゃないのよ涙は」「DESIRE―情熱―」などヒット曲多数。NHK紅白歌合戦には8回出場。85、86年には2年連続で日本レコード大賞を受賞している。