政治

安保環境の激変で大転換 日本学術会議「軍民両用」研究を否定せず 年間10億円の血税投入「浮世離れ」組織、民営化案浮上で目くらましか

日本学術会議

日本学術会議の姿勢が注目されている。多額の血税が投入されながら、特定の政治勢力の影響力が強く、自国の防衛研究に過度なブレーキをかけてきたが、国会で、民生と軍事の「デュアルユース」(軍民両用)の先端技術について、「研究を否定しない」とする姿勢を明らかにしたのだ。菅義偉前政権では、日本学術会議の民営化が浮上していた。ロシアによるウクライナ侵攻や、中国による軍事的覇権拡大、北朝鮮の核・ミサイル開発など、日本を取り巻く安全保障環境の激変を受けて、現実的な方針転換をしたのか、生き残りのための目くらましなのか。

「(日本学術会議が2017年に公表した『科学者は軍事研究を行わない』という)『声明』は、デュアルユースのような安全保障に資する研究を、一律に禁止する趣旨のものではございません」

日本学術会議の事務方トップ、三上明輝事務局長は4月26日、参院内閣委員会で、自民党の有村治子参院議員から防衛研究や軍民両用技術への見解を聞かれ、こう答弁した。

自民党の有村議員は、日本学術会議の問題に切り込んだ

有村氏は「日本学術会議が、安全保障に資する研究や、デュアルユースの研究を否定しないことが明確になった」と、夕刊フジの取材に語った。

安全保障論が専門であるある研究者も「日本学術会議として『科学者の軍事・防衛研究を否定しない』と公言したのなら、大転換とも言える重みがある」と証言した。

どういうことなのか。

日本学術会議は1949年、すべての科学者を代表して、科学政策の提言などを担う国立アカデミーとして発足した。ただ、年間10億円もの血税が投入されながら、自国の防衛研究には否定的で、50年と67年に「戦争を目的とする科学研究には絶対従わない」という声明を出した。

前出の「17年声明」も、防衛省(防衛装備庁)が、先進的な基礎研究に資金を提供する「安全保障技術研究推進制度」を新設し公募したことを受け、改めて「軍事忌避」を打ち出すことが目的だったとされる。

声明の作成過程では、会議メンバーから「研究者への政府介入が強まる」との声があがり、自衛隊の合憲性や、ミサイル防衛への疑義まで飛び出したという。

日本学術会議の17年声明を受け、全国で「軍事・防衛関係機関からの研究公募を認めない」「防衛装備庁の研究制度への申請は認めない」などとするガイドラインを定める大学が続出した。その結果、安全保障技術研究推進制度が始まった2015年度は大学から58件の応募があったが、20年度には9件に激減した。

インターネットが象徴するように、世界の先端技術の多くは軍民両用だが、日本は防衛研究の手足を縛られるかたちが続いた。世界の安全保障環境が激変するなか、日本学術会議の姿勢は「浮世離れ」していた。

岸信夫防衛相は「安全保障技術の優位性を維持、向上していくことは国民の命、平和な暮らしを守るため不可欠だ」と憂慮していた。

こうしたなか、菅前政権は昨年5月、首相官邸で「統合イノベーション戦略推進会議」(議長・加藤勝信官房長官=当時)を開き、経済安全保障に関わる技術について調査研究し、政策を提言する新たなシンクタンク組織を創設する方針を決めた。

事実上、日本学術会議の民営化を見据えた動きといえた。

岸田文雄政権は昨年10月に発足した。有村氏は4月14日の参院内閣委員会で、日本の安全保障に資する基礎研究まで「軍事研究だ」と一くくりで忌避する現状について、政権の方針を確認した。

岸田文雄首相

小林鷹之経済安全保障担当相は「防衛分野で利用の可能性があることをもって研究開発を単純に否定すれば、わが国の科学技術イノベーションが世界から立ち遅れていく」「他の主要国と同様に、企業や国立研究開発法人だけでなく、知の源泉たる大学の力も結集して、先端的な重要技術の研究開発を推進していくことは必要不可欠だ」と答弁した。

こうした流れの中で、冒頭の日本学術会議の答弁はなされた。過去の経緯を知る限り、簡単に信じるわけにはいかない。

有村氏は「米中をはじめ、デュアルユースを前提としてどの国もしのぎを削って先端技術を磨いている。これは世界の潮流だ。ウクライナ侵略は人ごとではない。日本の国益、国民の命を守るために何が必要か、学術会議ははぐらかさず、真摯(しんし)に立ち位置を国民に説明する局面を迎えている」と強調した。

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