ブルース・リーのあまりにも有名な「雄たけび」だ。この年、香港映画『燃えよドラゴン』が大流行。奇声を上げながら(おもちゃの)ヌンチャクを振り回す小学生が巷にあふれた。長年に渡り、ものまねやコントに取り上げられた「鉄板ネタ」で、もはや新鮮味はない。
ところで、今の若い人たち、たとえば小学生などは、奇声から始まるこの一連のパフォーマンスをちゃんと「かっこいい」と思ってくれるのだろうか。現代的にませたスマホ児童だけでなく、ちゃんと親に怒られるまで変な声を上げながらドタバタと走り回ってくれるのだろうか。もはやじいじ世代になった人たちの代表として、そこのところは気になる。
この年の主な事件は、「70歳以上の老人医療無料化実施」「浅間山大爆発」「国民の祝日法改正公布」「東京都江東区、杉並区からのゴミを実力阻止(ゴミ戦争)」「日航機、アムステルダム上空でアラブゲリラにハイジャック」「来日中の韓国新民党元大統領候補・金大中、東京のホテルから白昼強制連行(金大中事件)」「江崎玲於奈、ノーベル物理学賞受賞決定」「関西で、スーパーのトイレットペーパー買い占め騒ぎが発生」など。
この年の映画は『仁義なき戦い』『ジョニーは戦場へ行った』。本は、山崎豊子『華麗なる一族』、五島勉『ノストラダムスの大予言』など。プロ野球巨人がV9を達成した。
オイルショックを迎えた高度経済成長の踊り場時代、まだ世の中が高度化しきっていない、素朴な思いや熱量が評価されているような時代だった。単純さの最高潮。私にはそんな時代に映っている。 =敬称略 (中丸謙一朗)
〈昭和48(1973)年の流行歌〉 「神田川」(南こうせつとかぐや姫)「なみだの操」(殿さまキングス)「あなた」(小坂明子)