「国の長期債務残高が、2022年3月末時点で1017兆1072億円となり、初めて1000兆円を超えた」と報じられた。日銀が国債を購入していることと関連付けて「日銀依存が強まっている」と問題視する報道もある。
各紙の報道は、「国の長期債務残高」について、「税収で返済しなければいけない」という説明ぶりも似通っている。
はじめに、やや嫌味な疑問を書こう。「長期債務残高」とは何か。10日の財務省発表資料は、「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(22年3月末現在)」だが、その中には「長期債務残高」という項目はない。これは、財務省が使ってきた言葉で、各社もその通りに報じているが、内容に問題があると気がついた人はいないのだろうか。
かつて、長期債務は「普通国債と借入金の合計」としていたが、その当時はそれがほぼ長期債務だったのでよかった。しかし、普通国債のうち1年以内の短期国債を発行するようになり、「長期」の意味合いがずれていった。22年3月末現在、1年以内の普通国債残高は69兆円なので、「長期債務が1000兆円を超えた」というのはミスリードだ。
また、財務省の公表する「借入金」は、各省間のものが含まれており、国民負担から相殺する措置が必要だ。マスコミは各省間相殺前の数字で報じているので、これもミスリードだ。