以上の話は、公会計に基づく包括的なバランスシート(貸借対照表)を見ていればよく分かる。
もちろん、「借金だけでなく資産も考慮せよ」「政府単体だけでなく連結ベースで、日銀も含めたバランスシートで見よ」など、会計の王道も重要だ。そこではネット債務残高はほぼない。
それとともに、負債の内訳でもバランスシートを見れば、普通国債、財投債、政府短期証券、借入金、それら以外の債務―となっているのが分かるはずだ。
それらの数字のうち都合のいいものを組み合わせてマスコミをけむに巻きつつ、債務状況を語って、ありもしない財政危機を煽っているのが現状だ。
一方、安倍晋三元首相の「日銀は政府の子会社」という発言を問題視する報道もあるが、発言内容は正しい。安倍氏の発言は、(1)日銀が購入した国債について政府は利払いをするが、これは政府に戻ってくること(2)日銀が購入した国債について政府が償還する必要がない―というものだ。これらは制度として正しい理解だ。
世界標準では、中央銀行の独立性とは、「手段の独立性」だ。中央銀行は大きな目標について政府と共有しながら、日々の金利の上げ下げなどについて独立して行使する権限が付与されているということだ。
これは、民間の親会社が年に一度、経営目標を子会社に与えるが、日々の経営までは口出しせずに子会社に運営を任せるのとほぼ同じだ。しかも、現状ではインフレ目標を超えていないので、マクロ経済の点からも問題はない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)