この国の現在の最大の「国難」は、破綻状態にあると言ってもいい財政である。2021年度末時点での「国の借金」(長期債務)は、実に1000兆円を超えた。国民一人あたり1000万円近い借金を抱えている勘定になる。
対コロナ対策への巨額支出のほか、少子高齢化が拍車をかける中での、医療、介護などの社会保障費の増加で国債発行額が増え、全体を押し上げたことに他ならない。
こうしたことに加え、今後、ロシアによるウクライナ侵攻が終結を向かえた場合、わが国は米国、NATO(北大西洋条約機構)諸国などとともに、戦後のウクライナの復旧、復興へ向けての応分の資金拠出を覚悟しなければならなくなる。
過般の世界銀行の会議では、ウクライナの建物やインフラの直接的被害額に、輸入激減などの間接的影響を加味しての被害額は、同国のGDP(国内総生産)の3倍以上に相当し、実に5600億ドルを超えるとの見方が出た。この戦争が長期にわたった場合は、わが国の応分の負担はさらに過重なものになることは言うまでもない。財政はいよいよ土俵際だということである。
政府は2025年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化させる財政健全化目標を掲げているが、財務省内から「とてもムリ」という声が聞こえてくる。
こうした喫緊の課題を、経済・財政運営に自信を持っていた角栄なら、果たしてどう乗り越えようとしただろうか。