転身する前はクローバー研究者
「寄り道は大切ですね。だって、作る映画のほとんどが自分以外の人生を描くのですから。できるだけ多くの人に会ったり、いろいろな場所へ行ったり。一見、無駄に見えることが実は重要なんだと思います」
〝大いに寄り道してきた監督〟を自負している。
大阪大学大学院に進み生物科学を研究後、大手広告代理店に就職し、コピーライターなどとして働いた後、CG製作にのめり込み独立。CMやMV(ミュージックビデオ)を作ったり、アニメ「君の名は。」のVFX(特殊効果)も手掛けたり。
「中学時代から映像を作る仕事がしたかったんですが、その方法がわからずで。大学で生物科学を選んだのも、研究テーマの映像のビジュアルにひかれたからです」
転身する前は、何とクローバーの研究者。そのせいなのか、感性は独特で斬新だ。
メガホンを執った映画「ハケンアニメ!」(東映)が20日に封切られる。長編としてはまだ2作目。だが、その完成度の高さに関係者から「鬼才誕生」との声も飛ぶ。
満を持しての作品は、その〝寄り道〟効果が随所に発揮されている。
公務員を辞め、アニメ会社へ飛び込んだ瞳(吉岡里帆)は新作アニメの新人監督としてデビューが決まる。だが同じ放送枠で、天才アニメ監督、王子(中村倫也)の新作とぶつかることになり…。
公務員からアニメ監督になった瞳と、研究者から映画監督へ転身した吉野耕平。「瞳の気持ちがとても理解できます」
アニメ製作に命を削る瞳と王子。2人を必死でサポートするプロデューサー役を柄本佑、尾野真千子がそれぞれ熱演する。「広告代理店ではプロデューサーもしていたので、その気持ちもよくわかります」と笑ってみせた。
実は、長編デビュー作「水曜日が消えた」(2020年)でも中村を主演に起用した。