環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を脱退した米国が、新たに「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)を提唱している。
この枠組みについて、政府は「米国のインド太平洋地域への積極的なコミットメントを示すもので歓迎する」としている。
IPEFは、バイデン政権が国内の反発が根強いTPPの代わりに打ち出した。日本や東南アジアの国々と連携して中国に対抗する経済圏づくりの枠組みで、バイデン大統領が来日する5月下旬に発足する見込みだ。
いわば、TPPに復帰できない米国が代わりに苦肉の策として考え出した経済枠組みだ。
IPEF構想について注目すべき点は、議会の承認プロセスを経ない枠組みだ。
その背景には、「大統領貿易促進権限(TPA)」が2021年7月に失効したことが影響している。
米国が他国と貿易協定を締結するにはTPAが不可欠だ。逆にいえば、TPAなしで、政権が交渉・妥結した協定を作ったとしても、議会の裏付けがないので実効性があるとはいえない。例えば、各種協定では関税の引き下げは必須項目であるが、議会の承認がなければ、関税の引き下げを盛り込むことはできないだろう。そもそも議会の承認がないなら、中身次第ではあるが、従来の協定のようにどこまで法的な拘束力があるのかどうかすら問題である。