菊池仁志 フィッティング予報

先輩選手から気をつけろと忠告を受けた競輪界の畳職人とは?1/1ページ

菊池仁志
菊池仁志

「おい菊池、あの人は畳職人だから気をつけろよ」。

自分がまだ新人選手だったころ、先輩の選手からそんな忠告を受けて直前控室に向かったことがありました。その「畳職人」とは、レースの成り行きで競りになるかもしれない選手のことでした。

「畳職人?」当時の自分は自力選手だったのですが、自在でも動けるようになってきたころのことです。強力な自力選手と同乗したレースだったため、先行争いで出切られたときにはインで粘る作戦を考えていました。しかし、肝心の「畳職人」の意味はわからないまま、レーススタート。自力選手同士のもがき合いになり、予想どおり出切られたところをインで粘る作戦を取ることになりました。

外で粘る選手は特別競輪でも優勝している大先輩でしたが、一回り以上も年上の選手だったので、簡単に外に飛ばせると思っていました。ところが、レースのスピードが上がってきたとき、自分の右肘にその大先輩の左肘が、グッと乗ってきたのです。まるで関節技を掛けられたように、この肘を払おうとしても、どうしてもどかせないのです。

自分がインで有利なはずなのにずっと重しが乗っているような状態で徐々に脚が削られていき、結局、競り負けてしまいました。自分でもなぜ負けたのかわからないような状況でゴール。

レース後、忠告をしてくれた先輩が一言。

「あれが畳職人の競りや」

今は機械で畳を縫い上げるのかもしれないですが、当時は職人さんが太い糸で畳を縫っていました。その時、太い針を畳に刺しながら縫うために肘を使いながら針を押し込んでいました。その様子を捉えて「畳職人」と名づけていたのです。

そのような職人技をレースで使う選手が当時は何人もいました。あのとてつもなくスピードが出ているレースの最中に繰り出される職人技の数々。

当時の競輪は今のような横に厳しいルールではなくて、格闘技のようなレースも多かったです。横にも激しく動くレースのなかで、巧みな技を繰り出してくる先輩選手の技術の高さにレースでは感服し、見るときはワクワクしていた覚えがあります。

今はスピード化された競輪になりました。誘導退避線からのスピードの上がり方は尋常ではありません。進化する競輪。ルール改正を経て、そのときどきのプロの技は見ていて今でもワクワクします。

松山FIナイター2日目の12Rは地元勢が人気になるメンバー構成だが、嵯峨選手のデキがいい。番手を回る和田選手と、中団にこだわる松川選手の折り返しから狙う。〔2〕↔〔3〕―〔1〕〔4〕〔5〕〔7〕。

(元競輪選手・プロコーチ)

■菊池仁志(きくち・ひとし)1961年7月生まれ。愛媛県松山市出身。1981年6月選手登録47期。83年4月S1班昇格。2011年11月にS級在籍のまま競輪選手を引退。競輪選手生活30年のうち、S級在籍は28年に及ぶ。

GI、GII決勝戦進出。GIII向日町優勝など。通算268勝。競輪選手引退後は、競輪解説、コラム執筆などを手掛け、15年からプロコーチとしても活動。「K-FITTINGバイクスクール」を開講し、ジュニアから社会人、プロ選手といった幅広い層の指導にあたる。選手の癖を読み取るのが得意。

健活手帖

zakスペシャル

主要ニュース

ランキング

  1. 〝史上最悪〟KDDI通信障害、賠償額は!? 48時間以上続く異例の事態に「危うさ」浮き彫り 再発リスク・補償・自衛策あるか

  2. ジャガー横田一家に「親のしつけが悪すぎる」の声 長男の「寮母の飯がマズイ」発言が物議、夫・木下氏の対応にも批判

  3. 徴用工めぐる官民協議体、韓国できょう初会合 日韓両国の企業や個人の拠出で基金設立案も

  4. テレビ局が一斉に発信していた「SDGs」、最近見かけなくなった理由

  5. コロナ感染急増も「50歳以下は自粛不要」と専門家 オミクロン派生型「BA・5」の置き換わり進む 「すでにかぜレベルに近い」児玉栄一教授

  6. 【2022年夏・参院選】香川選挙区 自民優勢のウラに〝野党大物2人〟の因縁 強すぎるライバル意識 地元市議「なぜ君たちは共闘できないのか」

  7. 紅白出場の人気女性歌手に薬物疑惑 コロナ禍、クスリにハマる芸能人が増加 「激やせ」がネット上で話題になることも

  8. 日本との関係改善の前に韓国は「竹島侵略」の謝罪と償いを ルール無視継続なら「経済制裁」辞さず 大原浩氏が緊急寄稿

  9. メジャー帰りの野手苦戦 広島加入の秋山翔吾は輝き取り戻せるか 2軍戦に出場、3打数無安打

  10. 【マンション業界の秘密】要注意!高い物件をペアローンで買うリスク 今は結婚した3組に1組が離婚する時代、完済前に訪れる困難

ピックアップ連載

連載一覧へ

最新特集記事

特集一覧へ