■浴室、ガレージ
オリガルヒの富豪をめぐっては、1月に投資会社ガスプロム・インベスト幹部のレオニド・シュルマン氏が浴室で、ウクライナ侵攻後の2月には同グループのガスプロム幹部のアレクサンドル・チュリャコフ氏が自宅ガレージで、それぞれ遺体で発見された。
4月にガスプロムバンク元副社長のウラジスラフ・アバエフ氏が妻と娘と「無理心中」した翌日、天然ガス大手ノバテク元副会長のセルゲイ・プロトセニャ氏一家の「心中」も発覚した。今月8日には石油会社ルクオイルのアレクサンドル・スボチン氏が、霊媒師とされる人物宅の地下室で死亡するなど、少なくとも8人のオリガルヒとその家族らが不審死している。
■マフィア殺害か
「8人もいるだけに自殺の可能性は低い」と疑うのは、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏。「ロシアにはとどまれないとみて海外逃避をもくろむ富豪間でトラブルが発生し、マフィアらを用いて、殺害に及んだ可能性もある」と推測する。
米紙ニューヨーク・ポストは、ロシアの諜報機関がエネルギー産業幹部の名前を含むリストを作成していたと報じた。対外諜報機関による秘密工作の資金調達に関する情報漏洩(ろうえい)を疑ったためだという。
前出の中村氏はオリガルヒの不審死について「連邦保安局(FSB)第6局が関与した可能性がある。プーチン氏とオリガルヒの利益を守るために創設された部署といわれており、内部情報を知る『裏切り者』を見せしめに殺害した可能性がある」との見方を示す。
オリガルヒの動向はプーチン政権にとってもダメージが大きい。中村氏は「西側が制裁を打ち出すことによってオリガルヒの分断は加速し、政権に不利な状況が続くだろう」と語った。