国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアが、白昼堂々、ウクライナを侵略し、核の恫喝(どうかつ)を行った。世界は震撼(しんかん)した。核兵器は、最終兵器であり、撃ち合えば数百万人が死ぬ。その恐怖と、あまりの愚かさが相互抑止を担保している。そこには、「核兵器国は責任ある理性的な国である」という前提がある。
ところが、ウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナに軍を進め、残虐行為を繰り返し、最悪の場合には核を使うと恫喝した。ロシアの核ドクトリンは特殊であり、小規模な戦術核を先制使用することを公言している。核兵器を早めに投入することで、ロシアの決意を示し、敵にエスカレーションを思いとどまらせるという戦術である。
問題は、プーチン氏にとっての核心的利益が、本来のロシア本土防衛ではなく、「ウクライナの属国化」という個人的野望に置き換わってしまっていることである。プーチン氏は、核を使ってでもNATO(北大西洋条約機構)軍の介入を阻止したい。ロシアとの核対決を恐れるNATOは介入しない。ウクライナ南東部は文字通り、市民を巻き込んだ地獄絵図の様相である。
中国は、ロシア同様、「世界秩序の現状打破」をもくろむ。習近平国家主席は今年、鄧小平の遺訓を破り「3期目」に突入する。おそらく、4期目も狙うであろう。