「原発不明がん」という、聞き慣れない病気がある。最初にできたがんの「原発巣」が見つからず、転移した病巣だけが見つかるがんのことだ。がん全体の1~5%を占め、日本では推定で年7000~8000人。標準治療が確立しておらず、治療成績もかんばしくないものの、新しい薬が承認され今後の治療、研究の進歩が期待されている。専門家に聞いた。
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原発巣が見つからないとはどういうことか。
国立がん研究センター中央病院の米盛勧・腫瘍内科科長は「がんは一般的に原発巣から進行して転移していくと理解されているが、このがんは、転移先のがんが見つかってもその原発巣が見つからない」と説明する。
がんは発生後に小さくなったり、なくなったりする場合があるため、原発巣のがんが消え、転移先だけで増殖すると原発不明がんという状況が生じる。実際にこのがんで亡くなった人を調べても20~50%は原発巣が見つからず、消えた可能性があるという。
がんは通常、発生部位の臓器や組織によって症状や検査結果に特徴があり、治療もそれに沿って進められる。原発不明がんではそうはならない。米盛さんによると、原発巣探しで、専門病院への紹介が数カ月遅れになることもあるという。