コロナ禍で消費が抑圧されたために過剰貯蓄があり、それが消費爆発となって民需が好循環するはずなので公的部門は出なくてもいいという一部の意見もある。そうであっても、民需を引き出すために、公的部門から投資で動いてもいいだろう。民間部門の動きを待ってから政府が動くというのは本末転倒だ。
外需は輸入増がGDP押し下げ要因になった。外需の寄与度マイナス0・4%の内訳は、輸出がプラス0・2%、輸入がマイナス0・6%だった。
実質GDPの水準をみると、19年度が約550兆円、20年度が約525兆円、21年度が約537兆円なので、まだコロナ前を十分に回復していない。相当額のGDPギャップ(総需要と総供給の差)があり、エネルギー・原材料価格の上昇があっても、価格全般が上昇する「物価上昇」につながりにくい。
5月20日公表の4月の消費者物価は総合で前年同月比2・5%増、生鮮食品を除く総合が2・1%増、生鮮食品・エネルギーを除く総合が0・8%増だった。今まで携帯電話料金の引き下げが1・5%程度物価を押し下げていたが、その効果が剥落した。それでも、物価の基調を示す生鮮食品・エネルギーを除く総合が0・8%増とインフレ目標の2%には程遠い。
4~6月期にはGDPは改善するだろうが、GDPギャップは依然残る。さらなる景気対策が必要だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)