5月24日はボブ・ディランの誕生日。81歳だ。人それぞれに多感な時期、己の生き方の指針を決めてしまうほど影響を受けた存在があるはず。例えば、ビートルズこそ我がアイドル、俺はストーンズひと筋、永ちゃんに一生付いて行くぜ、みたいな。僕の場合は、それがボブ・ディラン。
彼が音楽界に登場して世界を震撼させた1960年代、僕はまだ子供だったが、ティーンエイジになってその名前と音楽に出合い、のめり込んでしまった。当然のごとくフォークギターを抱えハーモニカホルダーを首に引っ掛けて〝暇があったら弾き語り〟の日々が始まる。
「ディランのどこがいいの?」とはよく言われるが「ボブ・ディランだから」としか答えられない。奇妙な声質に、歌っているのか語っているのか叫んでいるのか捉えどころのない歌唱。新しいアルバムを出すたびに「あんた誰?」と言いたくなるほどの変幻自在さ。しいて言えば「だからいい」と言うしかない。あ、こういう「ディランとは……」みたいなことはここでは横に置いておこう。とても1000字コラムで書けることじゃない。それよりも、彼がいかに歌うことが好きか、について書く。
初めて生の姿を見たのは初来日の時、78年の大阪松下体育館。大学2年の僕は3日間通い(そのライブは例によって見たこともないディラン・ワールドだったが)ただただ打ちのめされた。何をやっても付き物の批判を「賛否両論上等」とぶちかまして来る態度に惹かれた。以降、来日のたびに駆けつけたが、忘れられないコンサートとなると、36歳の時に1年間アメリカにいた時に何度か見たディランだ。