長らく続いたコロナ自粛で、運動不足や偏った食事により脂肪肝になってしまった人がいる。肝臓に5%以上脂肪がたまった状態が、脂肪肝だ。多量飲酒はもとより、単に食べ過ぎて肝臓に余分な脂肪がたまる非アルコール性の脂肪肝の人が増加傾向といわれる。多くの場合は無症状だが、放置して乱れた食生活を改めないと、やがて炎症が広がって肝炎、さらには肝硬変につながるといわれる。では、肝硬変と背中の痛みの関係はどうか。
「肝硬変になると肝臓が萎縮し、周囲の神経を圧迫することもないため、基本的には痛みを伴いません。むしろ、黄疸(おうだん)、食欲不振、全身倦怠(けんたい)感などの症状が強くなります。とはいえ、肝硬変に伴う肝がんの破裂で、右脇腹から背中にかけての激痛により、救急車で運ばれる方もいます」
こう説明するのは、東邦大学医療センター大橋病院消化器内科の渡邉学臨床教授。肝臓病の専門医で、診断・治療を数多く行っている。
「70代や80代で気づかぬうちに非アルコール性脂肪肝炎から肝硬変になり、肝がんを発症する方がいるのです。肝炎ウイルスとは関係なく、食生活の影響が大きいと感じます」
肝硬変になると肝細胞が減少・または死滅することによって、肝臓が硬く変化して機能が低下する。同時に肝がんの発症リスクも高くなる。以前は、C型肝炎ウイルスによるC型肝炎の人が、肝硬変になって肝がんを発症するケースが多かった。今は、C型肝炎の治療法が飛躍的に向上し、C型肝炎ウイルスを排除できるため、C型肝炎による肝がんリスクは減っている。