JR東海の葛西敬之名誉会長が25日、亡くなった。享年81。巨額の赤字を抱えた旧国鉄の分割民営化に尽力し、新たに発足したJR東海でも東海道新幹線の整備など、国の根幹となる交通インフラの整備に力を入れた。ただ、悲願だった「リニア中央新幹線」の開業は、環境への悪影響を主張する静岡県の川勝平太知事の強硬な反対で混迷している。日本経済を牽引(けんいん)するはずの国家的事業の現状に、葛西氏は泉下で何を思うのか。
「利用者の便益、サービスに飛躍をもたらすのが、当社の国家的使命だ」「外部経済効果が極めて大きい超電導リニアは本来、国がやるべき話」「当社が主体となる形でやろうと考えている」
葛西氏はかつて自力建設を進めるリニアへの思いを、こう語っていた。25日早朝、間質性肺炎のため死去した。
1963年に旧国鉄に入った葛西氏は、JR東日本社長を務めた松田昌士氏、JR西日本社長を務めた井手正敬氏とともに徹底した合理化などで分割民営化を内部から主導し、「国鉄改革3人組」と呼ばれた。JR東海では取締役、社長、会長を歴任し、2014年から名誉会長を務めた。
リニアの営業速度は時速500キロで、品川―名古屋を40分で結ぶ。日本経済を活性化させるだけでなく、「インフラ輸出の目玉」としても期待される。中国もリニア開発を進めるなか、一日も早い開業が望まれるが、同県北端の南アルプス地下を通る静岡県が猛反対している。