コロッケという名の〝モノマネ・アーティスト〟をはじめて見たのは42年前。東京・代々木にあった山野ホールの楽屋だった。当時、高視聴率を誇った日本テレビの人気番組「お笑いスター誕生!!」の収録現場だ。
1980年は、漫才ブームが日本列島を席巻した年で、朝から晩までお笑い!お笑い!お笑い!という日々だった。その流れで、まだ素人でも実力のある人材を発掘しようという意図で企画されたのがこの〝お笑いスタ誕〟で、大学生だった私も同級生の北野誠と「誠&がっしゃん」という漫才コンビを組んで出場していたのだ。まだほとんど無名だったシティボーイズ、とんねるず、イッセー尾形などがスターを目指して、毎週しのぎを削っていた。
誰もがオリジナル性を追求していたけれど、漫才・コント・漫談の亜流からなかなか突き抜けられず苦しんでいた。そんな中、モノマネというジャンルの芸人は少なく、思い返すとコロッケとあと数人だけだったかもしれない。
彼はそれまでの常識だった「声マネ」に顔芸を加え、大げさにアレンジしたパフォーマンスを繰り出して観客を爆笑させた。審査員たち(赤塚不二夫・タモリ・京唄子らそうそうたる顔ぶれ)や司会の山田康雄、中尾ミエらも毎回唖然となって言葉をなくし絶賛していた。
その勢いでプロとしてデビューすると、コロッケはそれまで見たことのないモノマネで(野球の投手で言えば変化球や魔球を投げ込んで)見るものにお腹を抱えさせるのだった。