国内男子ツアープロ№1を決める「BMWツアー選手権森ビル杯」を制したのは、身長158センチの比嘉一貴(27)だった。
テレビ桟敷の俺は、最終組の比嘉が15番ホールでイーグルパットを決め、16、17番で難しいパーパットをねじ込んだのを見て、比嘉の優勝を確信した。パットのうまさが際立っていた比嘉に勝利の女神がほほ笑むと思ったからだ。
最終グリーンでは、決めれば優勝となる3メートル弱のバーディーパットを前に比嘉はアドレスをいったん外した。右手をプルプルと震わせていた。緊張によるしびれを感じ、仕切り直した。俺も経験したが、緊張のしびれは急に手、腕、肩周りに強烈なダルさを覚えて力が入らず、動かせなくなるんだ。
構えを仕切り直す勇気と冷静な判断を持ち合わせていたからこそ、「小さな巨人」比嘉はツアープロの頂点に立てた。
対照的だったのは最終組の2組前でラウンドしていた大槻智春(32)だった。16番ホール終了時点でスコアを8つ伸ばして単独首位に立った。2位に2打差をつけて迎えた17番パー4は平均ストローク4・677の最難関ホール。大槻は2打目をショートして池にブチ込み、ダブルボギー。2打の貯金を吐き出してしまった。