さすがは財務省、転んでもただでは起きず、とでも言うべきか。
岸田文雄首相は5月末に発表した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」原案で「基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の2025年度黒字化目標を堅持する」の記述を外した。
安倍晋三元首相を中心とする自民党の積極財政派の強い働きかけが功を奏したと思いきや、この原案の中身をよく見ると、要所要所に財政支出拡大阻止の「地雷」が埋め込まれている。
例えば、骨太2021を来年度予算編成の基準にするとある。骨太21は全般的な財政支出抑制や消費増税による財源確保をうたった18年の骨太を堅持したものだ。
この原案が閣議で了承されると正式な政府案となり、PB黒字化目標達成年度の縛りがなくても、これまで通りの緊縮財政・増税路線が続くことになる。
慌てた安倍グループは再び水面下で激しく原案の修正を求めた。その結果、岸田政権は「重要な政策の選択肢を狭めることがあってはならない」との文言を加える修正に応じた。それでも「骨太方針2021に基づく」という文言はそのまま残った。
安倍氏らは防衛費に関しては財政規律の例外扱いされると評価しているが、財務省はもとより一定の防衛予算上積みを覚悟している。岸田首相は先に来日したバイデン米大統領に「防衛費の相当な増額」を約束したためだ。