ペットとのふれ合いは心を豊かにしてくれる。では体の健康に及ぼす効果はどうだろうか。国立環境研究所と東京都健康長寿医療センター研究所のチームが1万人以上の高齢者を調べると、犬を飼っている人は飼ったことがない人に比べ、介護や死亡が発生するリスクが半減することが分かった。日々の散歩や他の飼い主との交流がプラスになっている可能性がある。ペットの健康効果が示された形だが、日本の住宅事情では飼うのが難しい側面も。チームの谷口優・国立環境研究所主任研究員=顔写真=は「高齢化社会に向けて人とペットのよりよい関係を探る必要がある」と話す。
▽動物の恩恵
病気の子どもや体の不自由な人に動物がもたらす恩恵は多い。病院で活躍する「セラピードッグ」が一例。入院して不安や痛みを抱える患者や家族を癒やす。盲導犬や介助犬は周囲や社会とのコミュニケーションを円滑にする効果もある。
カナダの病院は、救急外来で長く待たされる患者のいらだちを鎮めるためにセラピードッグを導入。約200人を対象に調べると、待つ間に犬と10分間ふれ合った人は、何もしなかった人と比べて痛みなどの症状も大きく軽減していた。
ただこうした研究は病気の人が対象の場合がほとんど。谷口さんは「健康に問題のない一般住民を調べた研究は少ない。ペットが健常な高齢者に及ぼす影響を分析してみようと考えた」と話す。