2カ月間にわたる都内での路上生活をつづった『ルポ路上生活』の取材中、私は7年前のアジア回遊旅行でも味わった責任の一切伴わない生き方を思い出していた。
ところで、ホームレスも金を稼ぐが、それは明日を生き抜く手段とはかぎらない。「アジア回遊編」を続ける前に、ホームレスの金稼ぎ事情をまとめておきたい。
ホームレスが金を稼ぐ方法といえば、それは言うまでもなく「空き缶拾い」である、と私も実際に路上生活をする前までは思っていた。
しかし実際のところは、空き缶拾いをしているホームレスは全体で見ると結構な少数派だ。これは、とても意外であった。
空き缶拾いを語るには、まず現在のホームレスの住居事情に触れる必要がある。バブル崩壊後の1990年代前半、ホームレスの多くは公園などに自作の小屋を建てて暮らしていた。現在は片手で数えるほどしか小屋を確認できないが、当時の上野公園には、600人を超すホームレスがブルーシートに覆われたテントで住んでいたそうだ(風樹茂著『ホームレス入門―上野の森の紳士録』より)。