PANTA 1960年にオープンしたキャンティ(飯倉片町のイタリアン・レストラン)の名前は、1960年代後半にもなると音楽関係者なら誰でも知っていたし、実際に通っている知り合いも多かった。ロカビリーのころからミッキー・カーチスさん、かまやつひろしさんとかは常連だったよね。それからGSの時代になってザ・スパイダース、ザ・タイガース、ザ・テンプターズのメンバー。その流れからすればミッキーも行っていたのかな?
MICKIE うん、よく行っていたよ。ザ・ゴールデン・カップスのメンバーも、デイヴ平尾やマモル・マヌーは早くから東京に出ていたからね。横浜ばかりというわけではなかったんだ。キャンティのオーナーの川添浩史さんの夫人の梶子さんは、みんなにタンタンと呼ばれて慕われていて、同じビルの1階(キャンティは2階と地下)にはタンタンのブティック、ベビードールがあってね。カップスのスーツをそこで作ったりもしていたんだよ。
P 上客のなかには皇族関係や、三島由紀夫、黒澤明、黛敏郎なんて名前も出てくるからなあ。さぞやきらびやかだったか。けど、頭脳警察の一派は一度も行ってない。もしかしたら隠れて行ってたヤツがいるかもしれないが(笑)。だって俺にセレブのサロンなんて似合わないだろ(笑)。
M PANTAは1970年初めのあたりはどこが根城だったの?
P それがさ、キャンティからはそんなに離れていないんだよ。そのあたりが面白いよね。頭脳警察の事務所があったのは西麻布の霞町。ワンメーターもいかないくらいの場所で、セレブとは似ても似つかないヤバいヤツらが蠢いていた。
M 霞町には東京に出たばかりのマモルが住んでいたかな。渋谷~六本木界隈は青山にしても、夜な夜な若者が集まっていた。横浜もそうだけど、あのころはあの店、あの場所に行けば誰かがいるって、そんな感じで毎晩自然と盛り上がっていた。