心臓や胃、大腸などと違って、あまり意識を向けることのない「腎臓」。しかし「肝腎(心)要(かんじんかなめ)」という言葉もあるように、人が生きていくうえで必要不可欠な臓器である。この腎臓の病気「慢性腎不全」とその最新治療について、埼玉医科大学教授の中元秀友医師が徹底解説する。
腎臓は、お腹のやや上の背中側に、背骨を挟むように2つ正対して存在する「ソラマメ」のような形の臓器です。
この腎臓が、どんな働きをしているかご存じでしょうか。まず、皆さんもご存じの通り、体内の老廃物を尿として体外に排出する働きが挙げられます。ここでいう老廃物とは、水、過剰な塩分、カリウム、カルシウム、リンなどの他、尿素窒素、アンモニアなどの尿毒素物質も含まれます。この機能が低下すると、毒素が貯まって尿毒症になったり、肺水腫のように息苦しさを招く、あるいは塩分過多でむくみが生じることもあります。
しかし、腎臓にはこれ以外にも大きく2つの働きがあるのです。その1つはホメオスタシス(恒常性の維持)。言い換えれば、体を「普通の状態」に保たせようとする機能―です。
血液を本来の弱アルカリ性に保つ、体内の塩分濃度を一定に保つ―といった、健康を維持する上での最も重要な〝調整〟を、腎臓は脳や心臓などと連絡を取り合いながら行っているのです。