ロシアのウクライナ侵攻を明確に非難しない中国に対し、「協力相手ではなく脅威」と見る人がG7(先進7カ国)で増え、対中認識が悪化していることが21日、G7の「安全保障観調査」で明らかになった。各国のそれぞれ50%以上が台湾を念頭に、中国の領土的野心への警戒感を強め、イタリアを除く6カ国では、「ロシアに対峙(たいじ)しなければ台湾侵攻のリスクを高める」と過半数が回答した。
中国と対立する米国だけでなく、経済を背景に緊密な関係を築いてきた欧州諸国でも対中認識が悪化。「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」(岸田文雄首相)との危機感が日米欧全体に広がりつつある。
ドイツで26日に始まるG7首脳会議(サミット)を前に、世界の代表的な外交・安全保障フォーラム「ミュンヘン安保会議(MSC)」がG7の市民ら計7000人を対象に調査した。日本時間21日夜に公表される。
中国は2月24日の侵攻開始以来、ウクライナの主権や領土を尊重するとしながら、国連安全保障理事会や総会のロシア非難決議案採決で棄権を重ね、プーチン政権を明確に非難していない。
その結果、中国の領土的野心に対する警戒感が強まったかどうか尋ねたところ、いずれの国も50%以上が「強まった」との認識を示した。こうした回答が最も多かったのは日本で58%。
イタリアを除く6カ国では、英国の63%を筆頭に過半数が「ロシアに立ち向かわなければ将来の(台湾)侵攻リスクを高める」と回答した。イタリアは47%だった。
昨年11月の前回調査と比べ、中国を「脅威」と見なす回答も英国を除く6カ国で増加。対中観はイタリアで21ポイント、独仏各12ポイント、日本6ポイント、米国は2ポイントそれぞれ悪化した。