いつぞやは、土曜とはいえ、明るいうちから「タン3種盛」を注文する1人客を見かけたことがある。そのタンが旨そうで、つい後追い注文をしてしまったのだが、タン不足の昨今、厚切りタン、タンスライス、タンスジという3種類を一皿で楽しめる機会はそうはない。
まずはオーソドックスにタンのスライスからか。薄くともあの滑らかか、歯切れのいい食感が口内を撫で回す。
快感を呼ぶ厚切りタンは、網の上で表面に焼き目をつけたら、皿の上で休ませ、また網に戻して深い焼き色と内部のロゼ色を目指したい。
厚切りタンのザクッという強い食感を堪能できたら、もう今日の仕事は閉店気分。
そして噛み込むほどに味わいの伸びるタンスジを合間に挟んで、一人悦に入る。こんなにタンを堪能できる通し営業の店などそうはない。
そんな原稿を平日昼に書いていたら、行きたくて仕方がなくなった。まずは出かける準備をしてから考えよう。
■松浦達也(まつうら・たつや) 編集者/ライター。レシピから外食まで肉事情に詳しく、専門誌での執筆やテレビなどで活躍。「東京最高のレストラン」(ぴあ刊)審査員。