梅雨時の楽しみのひとつが滝めぐり。この時期の滝は水量が多くなり、見応えがアップする。勢いのある滝はさらに轟音(ごうおん)をあげて水しぶきをまき散らし、勢いのない滝もそれなりに激しく流れ落ちる。滝の展望台に立ち、水しぶきを浴びながらいつもと違う滝を眺めるのが好きだ。
東京都の奥座敷、檜原村は、総面積の9割以上が山林。深い森と渓(たに)が造り出した滝があちこちにある。50以上の滝があると言われ、そのうちのいくつかは散策路や登山道から眺めることができる。代表的な滝としては、檜原都民の森の中にある三頭(みとう)大滝や、日本の滝百選に選ばれた払沢(ほっさわ)の滝などだろうか。これらは歩きやすい散策路を進んで滝までアプローチができ、観光客も多く訪れる。
一方で、登山道をがっつり歩いて山奥の滝に向かうのもいい。北秋川の支流、千足沢(せんぞくさわ)にかかる天狗滝は、岩肌を滑るように流れ落ちる姿が美しい、落差38メートルの滝。南向きで、条件に恵まれれば、滝の下部に虹がかかるのを見ることもできるという。登山道を1時間歩いてたどり着く、「歩かなければ見られない滝」だ。
昨年の6月下旬、滝見ハイキングに出掛けた。梅雨の晴れ間を狙ったつもりだったが曇り空で、時折霧雨も降っていた。足場の悪い急な登りは、雨に濡れてだいぶ歩きにくい。滝を「ちょっと」見に行くと思って取り付くと痛い目に遭うよね…、短時間でもこの登りはだいぶ悪いな、と思う。歩き始めて40分ほどで小天狗滝。登山道からすぐに眺められ、なかなか姿のよい滝だ。
さらに20分ほど進んで天狗滝。やっとたどり着いたとホッとした。せっかくなので滝の近くまで近づいてみる。落差がある割には流れは緩やか。浅い滝壺で足を水に浸し、うっすら水しぶきを浴びたら、熱くなった体がすうっと冷えてきた。
ここからさらに20分ほど登ると「綾織物のように美しい」綾滝があるのだが、今日はだいぶ足元も悪いし、ここで終了。こんなに急だったかなと首を傾げながら、足元の悪い登山道を慎重に下った。