日銀は17日の金融政策決定会合で、今の大規模な金融緩和策を維持することを決めた。具体的には、現行の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の維持を賛成多数で決め、長期金利をゼロ%程度に抑えることとした。
賛成は、黒田東彦(はるひこ)総裁、雨宮正佳副総裁、若田部正澄副総裁、鈴木人司委員、安達誠司委員、中村豊明委員、野口旭委員、中川順子委員。片岡剛士委員は、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。
この点について、岸田文雄首相は19日午前のテレビ番組で、円安抑制に向けて日銀の金融緩和政策を転換するべきだとの意見に対し、中小企業の金利負担への影響も考慮する必要があると述べ、「現状においては変えるべきではない」と述べた。
先進国の中央銀行と政府の関係については、「手段の独立性」はあるが、「目標の独立性」はないというのが国際常識だ。つまり、インフレ目標は政府と日銀で共有するが、その達成のための手段は中央銀行に任せて政府から口出ししない。この観点からすると、岸田首相の言い方には問題があり、日銀に任せているが、と前置きすべきだった。
また、これも国際常識なのだが、変動相場制の国では、金融政策を為替のために使ってはいけない。国際金融のトリレンマ(三すくみ)として、①自由な資本移動②固定相場制③独立した金融政策―のうち2つだけしか受容することができない。
民主的な先進国では、①の自由な資本移動が大前提なので、②の固定相場制か、③の独立した金融政策の二択になる。ここで、③の独立した金融政策を、国内雇用の維持のために選ぶのが、変動相場制だ。