ホームレスの稼ぎ口として代表的である「空き缶拾い」は現在、その保管の困難さから、高架下や河川敷に小屋を構えている一部のホームレスの特権のような存在になっている。ゆえに、段ボール片手に路上を転々としていた私は空き缶を拾うことができなかった。
朝になるとその場から立ち退き、どこかで夜を待たなければならない路上の生活は非常に不便だ。私はホームレス生活が1カ月半を過ぎたあたりでたまらずテントを購入し、荒川の河川敷に引っ越しをした。ここなら路上と違い、一日中寝床を構えることができ、拾った空き缶を保管しておくこともできる。
ようやく、空き缶拾いをする権利を得たわけだが、実際にやってみるとこれが絶望を味わうほどにつらく孤独な仕事であった。白内障で片目の視力のほとんどを失ったドヤ街・山谷(東京都台東区)のベテランホームレスは、「1日に40キロの空き缶を集める」と言った。当時、アルミの値段は1キロ=約180円。日に約7000円を稼いでいることになる。しかし、その稼ぎを実現するには知識と経験が必須だ。数日間、涙を流しながら空き缶を拾った身から、そのポイントを伝授したいと思う。読者のみなさまの役に立つ日が来るかどうかはわからないが…。
まず肝に銘じておきたいのは、東京23区ではその区によっては空き缶を拾う行為そのものが条例違反になるということだ。例えば、墨田区では区のホームページに条例違反になる旨が明記されているが、台東区では空き缶拾いを取り締まる条例はない。墨田区でも空き缶を拾っているホームレスは当たり前のようにいるが、リスクを減らすためには条例違反は避けたいところだ。