私は週に2日仕事を忘れ写真を撮りながらの街歩きを楽しんでいる。写真のテーマは家や会社・商店などの玄関先や店頭に飾られた動物たち、車に押しつぶされた路上の空き缶(ゴミ箱が整備されたこととポイ捨てが少なくなったこともあり近ごろは1カ月に1、2個しか見つからない)、ビル工事中のクレーンと青空の光景、蔦にからまった家、庭に咲く季節の花という具合に長年撮り続けたきたテーマは多い。
1年ほど前から夢中になっているのが暖簾(のれん)だ。ご存じの通り暖簾は店の入り口に掲げられている店の顔といえるもの。
平安末期の保延年間(1135~1141)の『信貴山縁起』に描かれているのがいちばん古い暖簾といわれている。暖簾は当初日光や雨風を防ぐ役割や外からの目隠し、結界だったが普及するにつれ商店が店を開けると掲げ、閉店すると仕舞うことで営業の目印となり、時代とともに商店の信用や格式を表すものとなった。
不祥事などで店の信用や名声を失うと暖簾に傷がつく、廃業になると暖簾をたたむとか暖簾を下ろすと言い、奉公人に同じ屋号の店を出すことや使うのを認めるのを暖簾分けと表現する。