日本は世界に冠たる省エネ大国なのだ。われわれは世界で最も効率よくエネルギーを使って経済を回している。現在のこの成果は、近年の政府の策が当を得たためではなく、民間の努力のたまものだ。
官房長官の頭を悩ます冷蔵庫を例にあげれば、日本の同じメーカー、同じ容量の冷蔵庫の消費電力が、2006年からの15年間で3割も削減されている。06年時点でも、日本メーカーの家電の省エネ設計は世界最高レベルだったものを、さらに3割も減らした。
「文句あるか、と言いたくなるほどの努力ですよ」
日本の大メーカーで経営の一翼を担う筆者の知人は苦笑する。民間企業のこうしたたゆまぬ努力に、比肩できるほどの仕事をしたと胸を張れる政治家が、永田町にどれほどいるのか。
一方、産業遺産情報センター長で、古今の日本の製造業に詳しい加藤康子氏によれば、日本の産業用電力料金は世界でダントツに高く、先進諸外国と比べても2倍近い額だという。これでは、いくら円安が進んでも日本のメーカーは国内に工場を戻すことができない。
「地元が広島」をことさら強調し、核に関することはことごとく「NO」を明言する岸田首相に謹んで申し上げたい。
かつての日本政府が、原子力基本計画を制定したのは昭和30(1955)年。広島と長崎に原爆が投下され、日本中が焼け野原となった敗戦から、わずか10年後のことだった。